電子書籍の可能性を調べてみる
電子書籍は、目で読むだけではなく音声で聞くものとして使われていないのか?
本当にただ、なんとなくふとどうなのかなと思ったので、少し調べてみました。
まずは、電子書籍の起源、規格あたりの話。
(補足ですが、センシティブな言葉について、呼び方や送り仮名の使い方について気になる点があるかもしれませんが、意図的ではありません。)
電子書籍の国際標準規格 DAISY(デイジー)
- EPUBと同様に、アクセシビリティの機能に配慮した電子書籍のフォーマット。
- 「Digital Accessible Information System」の頭文字を取った略称。
- デジタル録音図書に関する国際標準規格の一つで、日本語では「アクセシブルな情報システム」や「誰でも使える情報システム」などと訳されている。
- 規格の策定と普及促進を図る国際機関「DAISYコンソーシアム」は、1996年5月に日本、スウェーデン、イギリス、スイス、オランダ、スペインの6カ国の参加によって結成。事務局はスイス。現在、正会員と準会員合わせて45か国の団体が加盟。
読書のバリアフリー化を進めたオーディオブック
- 海外では、通勤に車を使うことが多い。
- その通勤時間を使って読書をしたいという欲求から、オーディオブックが生まれた。市場も大きく、人気作家の作品だと出版と同時にオーディオブックがでるのもめずらしくない。
- 同時に、オーディオブックは視覚障害者の読書/学習にも非常に有効な手段となった。
- 学習障がいをもつ児童生徒を支援するツールとしても有効。
- 視力の低下など、読む行為が難しくなっている人や、本を手にとって読む事が難しい人にも読書の機会を与えてきた。
マルチメディアコンテンツ
- パソコンの普及と処理能力の向上によって、マルチメディアコンテンツを扱えるようになった。
- たとえばディスレクシア(難読症)などのハンディキャップを背負っている人でも、「見る」「聞く」「指先で読む」のいずれかが可能なら読書を楽しめるように、コンテンツの構造を工夫しようというのが、DAISYの根底にある発想。
DAISY規格による書籍
DAISY録音図書
オーディオブック(CD-ROM)
音声ファイルが構造化されていて、章や見出しに直接ジャンプすることが可能。
マークアップ構造をもつテキストファイル「テキストDAISY」
htmlやxhtmlをテキスト読み上げ装置やソフトを使うことで音声による再生を可能にしたもの。
マルチメディアDAISY
上記2つ(DAISY録音図書、テキストDAISY)を融合したもの 「同期化ファイル」と「コントロールファイル」を用いることで、常に文字情報と音声が同期しながら再生される。 ナビゲーションコントロール機能もあるので、見出しだけ一覧にして読む/必要な章だけ読む/特定のキーワード部分だけ読むといったことが可能になっている。
アクセシブルなフォーマットの普及に向けて
マルチメディアDAISYだけでなく、音声、拡大、点字、電子テキストなど、利用者のニーズに応じて多様なフォーマットを提供するために、各団体で独自のマスターファイルを持っているところが多い(ワンソース・マルチユース)。
アクセシブルなフォーマットは、先進国でも数は少なく、途上国では入手できる可能性がかなり低い。
そのため、海外のものを入手するという方法が重要になる。その際に、マスターソースを提供してもらい、利用者に提供するところがニーズに応じて様々な形で提供できれば効率的。下記2点が必要になる。
- マスターファイルを世界共通のフォーマットにすること
- 国際交換を可能にする著作権制度および交換システムなどの整備
DAISY4への改定の際に、規格を「製作・交換用のフォーマット(DAISY4-AI)」と「配布用フォーマット」を分けることを考案。
製作・交換用のフォーマット(DAISY4-AI)
DAISY4-AIは、多様なフォーマットに変換するためのソースになるXMLファイルの規格。 モジュール構造のため、基礎的な部分はシンプルで、必要に応じて様々なモジュールを追加できる。
配布用フォーマット
DAISY4の配布フォーマットは、DAISYのアクセシビリティの機能をすべてEPUB3に持たせるという形で、EPUB3に融合された。
これは、一般的な利用者のためのメインストリームの規格でアクセシビリティを実現するという大きな意味がある。
著作権制度及び交換システム等の整備
- 世界知的所有権機関(WIPO)の新著作権条約のアクセシビリティの活動により進められている。
- 2010年、WIPOの著作権・著作隣接権常任委員会(Standing Committee on Copyright and Related Rights;SCCR)は、著作物へのプリント・ディスアビリティを抱える人々のアクセス権を保障するための新著作権条約の審議を行っており、2013年6月の外交会議で最終決定される予定である。
- その2013年の外交会議がおそらく以下のもの。
視覚障害者及び読字障害者による出版物へのアクセスを促進するための条約成立のための外交会議 - 盲人、視覚障害者及び読字障害者の出版物へのアクセス促進のためのマラケシュ条約と呼ばれる条約は、著作権者の権利の制限または例外を通じて、
アクセス可能な形式の出版物の複製、頒布、および提供を許諾するような国内法を採用することを加盟国に要請することによって「書籍飢饉」に対処するもの。 - 国境を超えて、アクセス可能な作品を作成し、各国で共有が可能。
どのような制限と例外を定義するかは各国政府に委ねられている。制限と例外に基づいて作成された作品の国境を越えた共有は、著者や出版社に対して、意図された受益者以外の誰かに頒布されることがないような保証をすることも目的としている。
つまりは…
具体的なところはそれぞれの国に任せるけど、出版物への国を超えてのアクセスを認めるけど、著作権の保護など、正当な利益が不当に損なわれることがないようにする必要がある。
普及に向けて
- EPUB3に、DAISYのアクセシビリティの機能がすべて採用された。
- EPUBに採用されたことにより、メインストリームの出版物のアクセシビリティの実現が進んだ。
- EPUBにDAISYのアクセシビリティの機能をすべて移植することを前提に、DAISYの次期規格であるDAISY4の配布フォーマットをEPUB3と定めることで、利用者から見ると次世代DAISYとEPUB3は完全に融合されることとなった。
疑問/問題
- マルチメディアDAISYは理想的なものであると思うが、普及しているのか?
- 普及していないとすれば、何がネックになっているのか?
- マルチメディアDAISYの場合は、同期化ファイルやコントロールファイルといったファイルが必要になる。
通常出回っている電子書籍ファイルは、テキストデータ/マークアップファイルだと思うが、これをこのまま使用してスクリーンリーダーなどで読み上げるといった対策はとれないのか? - EPUBの中に音声ファイルを再生する方法がある?